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Game Review:ZENKO BEAMS、8大会ぶりの頂点へ――節目の夏が示した女子クラブ野球の新時代

Aug 17, 2025

便利箱/小田

36チームが織りなした真夏の熱戦。NPB勢の早期敗退、地域クラブの躍進、そして1点差で決した決勝――第20回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会が映し出したものとは。

20回という節目を迎えた全日本女子硬式クラブ野球選手権大会。

8月の千葉を舞台に全国から36チームが集結し、それぞれの想いを胸に白球を追った。大会前に優勝候補と目されたNPBの女子チームがまさかの2回戦敗退を喫する一方、地域クラブや初出場チームが堂々と存在感を示すなど、女子野球の地図は確実に塗り替えられつつある。そして決勝は、ZENKO BEAMSと東海NEXUSによる手に汗握る攻防。わずか1点差、5対4でBEAMSが勝利をつかみ、実に8大会ぶり2度目の栄冠を手にした。節目の大会が描き出したのは、女子クラブ野球の「いま」と「これから」を鮮やかに照らす未来の姿だった。


白球が描く夏の軌跡――第20回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会

2025年8月。千葉県成田市と佐倉市の三球場を舞台に「第20回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会」が開催された。節目となる大会には全国から36チームが集まり、それぞれの誇りを胸に真夏の頂点を目指して戦った。照りつける太陽と声援の熱気の中、白球を追う選手たちの姿は、この大会が持つ重みを改めて感じさせた。


NPB勢、まさかの2回戦敗退

大会前から注目を集めていたのは、やはりNPB球団が運営する女子チームだった。読売ジャイアンツ女子、阪神タイガースWomen、そして埼玉西武ライオンズ・レディース。いずれもプロ球団の看板を背負う強豪で、優勝候補として名前を挙げる声も多かった。


しかし現実は予想外の展開となる。ジャイアンツは2回戦で九州ハニーズと対戦。九州を拠点に活動する地域クラブの粘り強い戦いに苦しみ、力を出し切れぬまま敗退した。阪神も2回戦でZENKO BEAMSと激突し、接戦の末に敗北。西武も2回戦で東近江バイオレッツの勢いを止められず、まさかの早期敗退を喫した。


「環境や看板だけでは勝てない」――その現実を突きつけたこの結果は、大会全体に大きな衝撃を与えると同時に、女子クラブ野球全体の底上げを強く印象づけるものとなった。


初出場チームの挑戦とはつかいちサンブレイズの快進撃

序盤の注目カードのひとつが、広島県廿日市市を拠点に活動するはつかいちサンブレイズと茨城県稲敷市を拠点に活動する茨城ゴールデンゴールズの一戦だった。茨城ゴールデンゴールズの男子チームの知名度は全国区だが、女子チームにとってはこれが記念すべき初出場。新鮮な注目を集めるなかで迎えた試合は、互いに意地を見せ合う展開となった。


結果は6対2でサンブレイズが勝利。経験の差を見せつけた形となったが、ゴールデンゴールズ女子の堂々とした初陣は観客の心に残ったに違いない。サンブレイズはその後、九州ハニーズとの延長戦を制してベスト4へ駒を進め、広島の女子野球の実力を全国に示す存在感を放った。


準決勝――4強の激突

ベスト4に残ったのは、はつかいちサンブレイズ、東海NEXUS、エイジェック、そしてZENKO BEAMS。いずれも実力派ぞろいで、準決勝は紙一重の攻防となった。


サンブレイズは粘りを見せたもののあと一歩及ばず、東海NEXUSが決勝進出を決めた。エイジェックも若さあふれるプレーで観客を沸かせたが、伝統あるZENKO BEAMSの経験と総合力の前に惜敗。決勝の舞台は、東海NEXUSとZENKO BEAMSという実力派同士の顔合わせとなった。


決勝――1点差を制したZENKO BEAMS

決勝戦の舞台は長嶋茂雄記念岩名球場。スタンドを埋めた観客の期待を背に、東海NEXUSとZENKO BEAMSが雌雄を決した。

試合中盤にリードを奪ったのはBEAMSだったが、NEXUSも粘りを見せて追いすがる。終盤には会場全体が息をのむような緊迫感に包まれた。


最終的にスコアは5対4。わずか1点差でZENKO BEAMSが逃げ切り、8大会ぶり2度目の優勝を飾った。歓喜の輪の中で涙を流す選手の姿は、この瞬間のために積み重ねてきた努力の大きさを物語っていた。


今大会が教えてくれたこと

節目の20回大会は、女子クラブ野球の現在地と未来を映し出した大会でもあった。序盤から番狂わせが相次ぎ、最後まで予想を許さない展開が続いたことは、競技のレベルが均衡してきたことを意味している。


NPBの看板チームが2回戦で敗退する一方、地域クラブや初出場チームが健闘した姿は、女子野球の裾野が広がり、誰にでも勝機がある時代に入ったことを鮮明に示した。サンブレイズやハニーズ、東近江バイオレッツのような地域に根ざしたチームが躍動したことも、女子野球が単なる競技を超え、地域文化として浸透し始めている証拠だろう。


そして、ZENKO BEAMSの優勝は「伝統と経験が再び輝きを放つ瞬間」を象徴していた。長いトンネルを抜け、8大会ぶりに栄冠を手にした彼女たちの姿は、女子野球に関わるすべての人に「努力は必ず報われる」という希望を与えてくれた。


運営面でも進化が見られた。観戦体験を充実させるキッチンカーや地元グルメの導入、オンライン配信による遠方ファンの参加など、大会全体が着実に進化を遂げている。


白球がつなぐ未来へ

36チームが刻んだ物語は、勝敗を超えて多くの価値を残した。選手たちの全力プレーはもちろん、応援する人々や地域の支えが重なり合って、この大会は特別なものとなった。

「女子野球はここまで来た」――そう実感させてくれた今回。そして同時に、「これからさらに広がっていく」という確信も与えてくれた。来年、また新たな夏の物語が始まるとき、どんなドラマが待っているのか。期待は高まるばかりだ。

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