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Game Review:未来をつなぐ夢の一戦――女子高校生が挑んだ「イチロー選抜 KOBE CHIBEN」

2025年9月2日

便利箱/小田

バンテリンドームに2万1233人の観衆、野球界のレジェンドと女子野球が交わした学びと希望

2025年8月31日(日)、名古屋・バンテリンドーム ナゴヤで開催された「高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」。来場者数は実に2万1233。日本野球のレジェンドたちと女子高校生選抜が織りなしたこの一戦は、勝敗以上の意味を持つ時間となった。イチローさんや松坂大輔さん、松井秀喜さん、松井稼頭央さんら往年のスターが躍動し、それに挑む女子選手たちの笑顔と真剣な眼差しが観衆の心をつかんだ。インタビューで語られた選手たちの声、そしてイチローさんが語った「男子野球との差」に込められたメッセージを振り返る。 8月31日、イチロー選手の地元でもある名古屋のバンテリンドーム ナゴヤに集まった観客は2万1233。週末のドーム球場は、いつものペナントレースとは異なる空気に包まれていた。「高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」。日本野球史を彩った伝説の名選手たちが一堂に会し、未来を担う女子高校生たちと対戦する夢の舞台に、人々は大きな期待を寄せた。

試合前、観客席には独特の緊張感と高揚感が漂っていた。マウンドに上がるのはイチロー選手。打者として日米通算4367安打、そして2025年に日本人初の米国野球殿堂入りを果たした存在が、背番号と同じ“51”歳を迎えてなお投手として先発する。その姿だけでスタンドは大歓声に包まれた。

投げられるボールは衰えを知らない。最速135キロを記録し、スライダーやカットボールで女子選抜打線を翻弄する。結果は111球を投げ、被安打わずか1、14奪三振の完封勝利。年齢を超えたパフォーマンスに観客は驚嘆し、女子選手たちは必死に食らいついた。 攻撃陣では松井秀喜選手が存在感を放った。三回、ランナー二人(イチロー選手、松坂大輔選手)を置いた場面で打席に立つと、投手が投じた初球を、現役時代を彷彿とさせる豪快なスイング。打球はライトスタンド中段に突き刺さる先制3ランとなり、球場は割れんばかりの歓声に包まれた。試合前の練習ではホームランが打てない中で、東京ドーム、ヤンキースタジアムを沸かせたその打棒は、今なお健在であることを見せつけた。 松坂大輔選手も安定したレフトの守備とバットでチームを勢いづけた。甲子園春夏連覇、西武ライオンズでの数々の快投、メジャーでのワールドシリーズ制覇――「平成の怪物」の名は、いまも健在だと感じさせる。さらに松井稼頭央さんは3安打の猛打賞。走攻守三拍子揃ったスターが、現役時代の華麗な守備と、打線のつなぎ役として試合を支えた。

試合はKOBE CHIBENの圧倒。七回に3点、八回に2点を追加し、最終スコアは8対0。数字だけを見れば一方的な展開だった。しかし、本当の主役は女子選抜の高校生たちだった。


彼女たちは果敢に打球へ飛び込み、声をかけ合いながら最後まで全力でプレーを続けた。結果では敵わなくても、野球への情熱と笑顔がスタンドにまっすぐ伝わってきた。

試合後のインタビューに登壇した阿部さくら選手は「いつもは緊張しませんが、すごく緊張してしまって、あまり覚えていないです」とはにかむ笑顔を見せ、イチロー選手からチーム唯一のヒットを放った毛利瑠花選手は「自分が絶対に打つ、という強い気持ちで打席に立ちました」と初ヒットの打席を振り返った。レジェンドたちとの真剣勝負を通じて得たものは、敗戦の悔しさよりも大きな学びと誇りだったに違いない。


2万1233人が見守る中で繰り広げられたこの試合は、スコア以上のものを観客の心に残した。イチロー選手の完璧な投球、松井秀喜さんの豪快な一発、松坂さんや松井稼頭央さんの活躍。それに挑む女子高校生たちの笑顔と全力プレー。勝敗を超えた交流は、女子野球の未来に向けた新たな扉を開いた。


この日を境に、野球の楽しさと可能性はさらに広がっていく。

レジェンドが示した“道”を、次は女子選手たちが歩み始める番だ。

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